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なんでマークが✂︎なの?っていうQ.に対するA.

ご存知の通り、我がテーラー夙川のマークはハサミです。

このマークは社章にもなっており、私や山内もそうですし、弊社のスタッフは全員
着ているジャケットのフラワーホールにはこの社章をつけることが義務づけられています。

でも初めてお会いした方に

「そのマーク、タカハシさんって散髪屋さんなのですか?」

って真顔で言われることもしばしば💦

そんなとき私は
「よくご覧下さい。ハサミの形が違うでしょ?
これは裁ちバサミと言って、生地を切るときに使うハサミなんですよ」
と申し上げるのですが、ハサミの形の違いなんてよく見てないですよね。(笑)

ちなみにこちらが散髪バサミ。


で、こちらが生地を切る裁ちバサミ。


違いが分かりますよね?

散髪バサミは親指と人差し指、中指、薬指を乗っけるカーブがそれぞれ
明確に分かれてるのに対し、裁ちバサミは親指とそれ以外の全部!みたいな
感じ。

ね?当店の社章は明らかに裁ちバサミでしょ。

このマーク、実は元ネタがあって、ひとつは今はもう無くなってしまいましたが
昔、私が勤めてたメーカーの取引先が同じような金色のハサミをモチーフにした社章を
つけておられたんです。
それを見て「カッコいいな」と思ってたこと。

もうひとつは裁ちバサミはテーラーにとって命であるから。

イタリアのサルトを訪ねてまわったときに、つくづく思ったんですが
洋服を仕立てるとき、生地を裁ちバサミでカットする瞬間。
それまで一枚の布でしかなかった生地が、形を変えて行くそのスタートといいますか
まさにひとつの儀式のように見えたんです。



ハサミってすごいなあ。
儀式に使う道具、まさに「祭具」やなあ。
なんて考えつつ、ナポリから移動しているときに、あるテーラーの店の前に掲げられている
オブジェを発見しました。


コレもらった!
と思った瞬間でした。(笑)


しかし店のマークにしようと思ったのもつかの間、ひとつの疑問と言いますか、
不安が私の頭をよぎりました。


「ハサミって『切れる』に繋がるアイテム。
『縁が切れる』などマイナスワードを連想してしまう」と。

どうしよう、と思ってスタッフに相談すると、職人で縫製や修正を担当してくれていた
(現在は独立して奈良で縫製基地というリフォーム専門店を開業)鹿岡(かのおか)くんが
「社長、逆ですよ。ハサミはとても縁起がいいアイテムなんです」と。

鹿岡くん曰く
「テープカットっていう儀式があるじゃないですか。
ほら『新しい道ができた』とか『新しい鉄道が開業する』とかのときにする儀式。
あれって『道を切り開く』『運命を切り開く』という意味があるんですよ。
つまり新しいことを始めるときに欠かせないのがハサミなんです」

と。


彼のその言葉を聞いて、なるほど!と強く納得しました。
で「よおし!裁ちバサミを店のマークに、そしてこの機会に社章にもしちゃおう!」と
決めることができました。

そしてラペルピン(背広の衿につけるアクセサリー)を作り、社章として全員で付けること
を義務化しました。


というわけで当店のマークにはそんな由来があります。
「散髪屋さん?」なんて言わないでね。(笑)